X市職員採用試験Part.10

【少し面談の時間をいただいてもよろしいでしょうか】

私は部長にチャットでそう送った。

しばらくすると

「いいよ」

声が返ってきた。

部長は、社員がいつも打ち合わせをしているオープンスペースで話そうとしたが、私は「誰もいない場所で」と断った。

事務室から少し離れた会議室で、部長と二人きり。

机を向かい合わせにして座る。

この空き会議室に来るまでの間に、部長の頭にはこれから起こることが浮かんでいるのだろうか。

「あの……大変申し上げにくいのですが、退職させていただきたいです」

私の言葉に、部長は机に向かってため息をついた。

そして笑い混じりにこう言う。

「この会社じゃダメだったか」

ダメなものか。

この会社には感謝している。
社会人としてのいろはを教えてもらったし、何より好きな業界で働けた喜びは大きかった。

しかし、学生時代に敗れた公務員試験にリベンジしたい気持ちは、どうしても抑えられなかった。

このままでは、ずっと負けた自分を背負いながら生きていくことになる。
働きながら受験する道を選んだのは、その覚悟の表れだった。

「退職の許可をいただきたいです」

「許可もなにも、止めることはできないからね。わかったよ。じゃあ退職届を出してね」

こうして面談は終了した。

事務室に戻る部長の足取りは、どこか早く見えた。

退職を告げたのは1月のこと。
年明け早々、私は人生の大仕事を終えたのだ。

ただ、心の片隅には小さな不安が残る。
私は本当に、4月に採用されるのだろうか。

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管理人

公務員試験で採用漏れになり何もかも失った公務員試験バカ。
市役所に最終合格したので仕事を辞めたものの、結局4月採用の連絡は来ませんでした。
受験歴は学生時代に17自治体、社会人時代に10自治体。
公務員試験の真相を詳らかするため、ブログで発信しています。

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コメント

  1. 匿名 より:

    更新待ってます!

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