Part.4・・・第2次試験(グループワーク+第2回個別面接)について
こうして、第二次試験に臨むことになった私は、グループワークとプレゼンに注力することにした。
対策については、長くなるので次回の記事で触れる。
試験会場は神奈川自治会館。
前日は関内駅近くのホテルに宿泊した。大雨が降るなか移動したのを今でも覚えている。
朝早くから会場へ向かう。建物は古くトイレがボロい。狭くて和式が1つしかなかった。
指定された座席に着くと、試験に関するアンケート用紙が配布された。当日中に提出すればいいらしい。
内容は、今年から導入された私服受験や試験全体についての考えを問うものだった。
そうこうしているうちに受験者が続々と集まる。
同日に集まったのは30人ほどだったであろうか。受験番号順である。
欠席者も数名いた。
そのため、グループワークの人数も調整された。
まずはグループワークが実施される。8人一組になり、試験室へ向かう。
他のグループも同時刻に別室で試験を受ける。
試験室に入る直前、職員からアルファベットが書かれた紙をランダムに渡された。このアルファベットが書かれた席に着き、お互いにA、Bなどと呼び合うのだ。
試験室への移動中、私はグループの一番後ろを歩いていたので、アルファベットの紙は最後に受け取った。
書かれていたアルファベットは、A。
B5サイズにも満たない小さな紙に、手書きでAとだけ記載されていた。
もう一度言うが、AからHまであって、Aだ。
やってしまった。
Aということは、大抵個人の意見を初めに発表する。メンバーも面接官も、いちばん注意して耳を傾けることになる。メンバーの意見と比較することもできないので、良い発言も評価されない。
「残りものには福がある」ということわざがあるが、実際に福などない。
人生は早い者勝ちだ。迷っていては負ける。
私がいかに優柔不断かという話をすると長くなるので、ここでは割愛する。
着席すると、面接官も入室する。その数は5人。
いよいよグループワークのスタートだ。
まず面接官からグループワークの進め方について説明がある。内容は以下のとおりだ。
最初にAから順番に自己紹介をしてもらう。自己紹介の内容は、グループワークの意気込みや趣味などで構わない。次に1人ずつ個人の意見を発表し、討論を開始すること。ただし、最後に3分間、面接官に対してグループでまとめた意見を発表してもらうのでそのつもりでまとめること。また、討論には司会者を決め、発表の時間までに発表者も決めること。発表者は何人でもよい。
こんなルールだ。
以下、再現。詳細に記述したいのだが、個人が特定されかねないので個々の発言は具体的に記述しないことをご容赦願いたい。
私から自己紹介をする。この試験に対する意気込みを述べた。他のメンバーは、趣味を述べる者もいた。
個人の意見を簡単に発表していった。予想以上に、意見はバラバラだ。
事前にテーマが発表されていたにも関わらず、薄っぺらい意見が目立つ。
続いて自由討論に移り、司会者を決めることになった。皆が目を見合わせて牽制し合うなか、一人の青年が口を開いた。
「私がやりましょうか」
グループワークにおいて、基本的に司会をするのはリスキーである。常に正しい方向へ討論を導き、時間内にグループの意見をまとめなければならないからだ。したがって、司会をやっていいのはその場を支配できるコミュニケーションの鬼だけだ。積極性を見せようと司会をやると、能力がないのがバレて評価を下げるのがオチだ。
一同、この青年に司会の役割を託した。見た目は社会人風で堅気の印象を受ける。
タイムキーパーも決めることになった。グループワークにおいて、タイムキーパーは上手く立ち回れば貢献力をアピールできる。時間を管理し、要所要所で経過時間や残り時間を発言するだけで面接官の印象にも残る。さらに発言のついでに自分の意見も付け加えることができる。
このことをわかっていたのか、グループの中で2人がタイムキーパーに立候補した。
少し無駄な譲り合いの時間が発生したが、学生らしき男性に決まった。
結論から言うと、この男性はタイムキーパーとしての役割を全く果たさず、意見も内容が浅かった。そもそも発言自体が少なかったのだ。
「では、発表者を決めましょうか」
別のメンバーが疑問を呈する。
「ところで、発表者って何人でもいいんでしたっけ。1人でしたっけ」
その発言に皆、口ごもってしまった。発表者の人数について面接官が何と説明していたのか覚えていない。もっと注意して聞いておくべきだった。
ここで、Dが口を開く。
「何人でもいいんですよ」
ああ、そうか。
根拠などないが、綺麗めなDが言うのならそうなのだろう。試験に落ちたら、Dを恨めばいい。
ひとまず発表者は討論の終盤で決めることにまとまった。
その後、ホワイトボードに個人の意見を書き込んでいく。
書記は、ホワイトボードにいちばん近い席の人がやってくれた。
「色んな意見が出ましたね。どうやってまとめましょうか」
途中、話が途切れないよう、司会の方がメンバー1人ずつ順番に意見を聞いていく場面があった。
他人に配慮できるし、落ち着いている。人の話は最後まで聞き、自身もでしゃばり過ぎない。
この司会者、有能だ。
私はというと、各個人の意見を1つにまとめていく際に、討論が活性化する発言を何度かした。
自画自賛だが、私の発言によって議論が正しい方向に進んでいったと本気で思っている。
それはたまたまではなく、発言内容が本筋から逸れたり沈黙したりした場合に、討論を本流に戻すため意図的にした発言だ。
私に対する質問にも具体的かつ理論的に回答し、メンバー全員が唸るほど納得したのが手に取るようにわかった。
これは私が長年苦心した末に生み出したテクニックなので、ここでの具体的な記述は避ける。
別の機会で述べることにしよう。
とにかく、司会者がまともな人でやりやすかった。
逆に、タイムキーパーがタイムキープをしていなくて困った。時間を言ってくれないので、私が残り時間を言うこともあった。
発表者も決まり、無事に発表も終わってグループワークは幕を閉じた。
私は最後の最後まで、グループの結論をより良くしようと尽力した。
グループワークが終了し、控室に戻った。
すると、グループの1人がメンバーひとりひとりにお礼を言っていた。
「ありがとうございました」
はい。こちらこそ。受かるのは俺だがな。
続いて、グループのなかで受験番号が早い人は個別面接に移る。後半組はお昼を挟んでから個別面接だ。
プレゼンさえ上手くいけば、勝機はある。
以下、個別面接の再現。
舞台は広めの会議室。面接官はグループワークの時と全く同じだ。
中央にボスらしきおじさん。残りはおっさんとおばさんだ。
個別面接の初めは5分間のプレゼン。任意でホワイトボードを使用することができる。
ここで注意したいのは、5分経過すると強制的に打ち切られることだ。
試験案内には5分間のプレゼンとしか記載されておらず、超過すると打ち切られるとは説明されていない。本番でそれを知り、一気に不安に襲われたのを覚えている。
私は十分な練習ができないまま本番に臨み、しくじった。
5分ぎりぎりの原稿を準備していたので、早口でまくし立てた。
本番で初めてホワイトボードも使い、意欲・向上心・行動力をアピールした。
しかし、現実は非情だ。気づくと、面接官の声が耳に入った。
「5分経過しました。そこまでにしてください」
私は手に持っていたマーカーを置くのを利用して、面接官から視線を外した。
最悪のスタートだ。
しかし、まだ終わっていない。挽回のチャンスは十分にある。
面)じゃあ、今ここで〇〇してみて
私)××は##ではなく、$$ということです
面)全然わからないね
ここから、私は坂道を転がるように評価を下げていく。
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