X市の最終試験を終え、後は結果を待つのみとなった。
神奈川県秋季チャレンジ試験と並行して受けていた市であり、秋季チャレンジが受かればそちらに行こうと決めていた。
しかし、師走に入り、もう秋季チャレンジは分厚い封書で不合格が通知されてしまった。
仕事のほうも、在職期間は短くなるが公務員になれるなら早く民間は辞めたほうがいいと思っていたし、同期と転職について語り合ったこともあった。
こう書くと仕事に不満があったと思われるかもしれないが、そんなことはない。
公務員を諦めてから入社したこの会社には感謝している。社会人としての基礎を教えてくれたし、穏やかな先輩たちに囲まれ、毎日成長を実感できた。
さて、X市の合否通知の発送される頃になると、毎日、帰宅時に郵便受けを覗くのが楽しみになっていた。
会社から帰る時間は辺りも暗くなり、気温もぐっと低くなる日が続いていた。しかし、合否通知を心待ちにしていた私には、コートを会社に忘れるくらい多少の天候など気にならなくなっていた。
今日もない、次の日もない、その次の日もない。
だいたい公務員試験の合否通知は、数ヶ月待たされるのが常で、〇月中旬頃に発送予定としか知らされず、到着日の予想もできない。民間企業とは大違いなのだ。
そしてついに、封書で最終合格が通知された。
学生時代から受験し続けた公務員試験。
学生時代の成績がどんなに悪くても、公務員試験との相性が良ければ合格してしまうこの試験は好きではなかった。
なんで性格の悪いあいつが国税専門官に受かってんだよ。
なんで親が公務員だからってあいつが地元の市役所に受かってんだよ。
生まれながらにして有利なポジションにいる奴らをたくさん見てきた。
傲慢だと思われるかもしれないが、公務員試験に懸ける思いは自分が一番だと思っている。
地元の自治体を受験するわけではないので、知識も熱意も人一倍持っている。
勉強を続けるうちに「公務員になったらいつかその地域を住みたくなる街、暮らしたくなる街にしてみせるんだ」という気持ちが強くなっていった。
あらゆる市民に対して、多角的にサービスを提供できるのが公務員の魅力だ。
合格通知はペラペラの紙一枚だったが、その重さは、これまで受け取ったどの不合格通知よりも重かった。
私の人生はここからがスタートである。
とりあえず公務員になれることは確定した。
秋季チャレンジ試験に落ちたのはショックだったが、もう気持ちは入れ替えるしかない。
来年4月から働き始めるのだから、退職と引っ越しの準備に取り掛からなければ。
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