12月。
私は寒空の下、とある高層ビルの屋上に立っていた。
ビュンビュンと音を立てて吹き付ける冷たい風を浴びながら、私は公務員試験に対する熱を、少しずつ冷ましていった。
手にはX市の合格通知。
もう、公務員試験の日程を調整する必要はない。
もう、興味のない自治体について調べる必要もない。
もう、当たっているかもわからない自己分析に頭を悩ませる必要もない。
だって、合格したのだから。
自分で決めた公務員試験の受験。
学生時代は何度も叩きのめされたが、社会人経験を経て、どうやら私も少しは成長したらしい。
さて、ここからは引っ越しと退職のスケジュールを立てなければならない。
4月から公務員として働くことを考えれば、普通に考えたら3月末退職が自然だ。
しかし、私の勤めていた会社は3月が繁忙期。3月に退職しては、迷惑をかけてしまう。
そこで、2月に退職することに決めた。
3月は、人生で初めてまとまった自由時間を持てる。
それもまた楽しみだった。
引っ越しも、2月中に済ませるつもりだ。
実は、住みたい物件の目星もつけてある。
何度もX市の合格を妄想していたので、市内での生活シミュレーションは完璧だ。
これまで住んでいた部屋は手狭だったので、新しい部屋が待ち遠しい。
公務員になった自分へのご褒美として、家賃は少し高めに設定した。
年内には管理会社に退去の連絡を入れるつもりだ。
そんなことを考えているうちに、最後の大仕事を思い出した。
上司に、退職の意向を伝えなければならない。

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