「あの、最終合格したんですけど、採用漏れってありますか?」
私は、思っていたよりも強い口調でそう尋ねていた。
ここは某資格試験予備校。
公務員試験の無料相談に来ていた。
目の前の茶髪の女性講師は、少しも迷わず言い切った。
「市役所で、それはないですね」
「……ありがとうございます」
やはりそうだ、と思った。
市役所で採用漏れなんてあるはずがない。
3月まで、内定連絡のチャンスはまだある。
引っ越してすぐ、住民票を移したその足で、私はここに来た。
それだけ、誰かに「大丈夫だ」と言ってほしかったのだと思う。
けれど、現実は――。
ない。
ない。
今日も、ない。
郵便受けを毎日覗いた。
3月の下旬になっても、通知は届かなかった。
信じられない気持ちでいっぱいだった。
これまで、誰よりも苦労する環境で育ってきた。
20年以上、耐えてきた。
その報酬が、公務員試験の合格だと、どこかで信じていた。
気づけば、季節はすっかり春に向かっていた。
耳を澄ますと、心臓が激しく鼓動しているのがわかる。
その音に合わせるように、私は初めて、自分自身に「無職」という現実を突きつけられた気がした。
あの春、私はまだ「待つ」という行為の重さを知らなかった。

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