Part.5・・・第2回個別面接
予定では総括のはずだが、書き始めたら筆が乗ってきたので、今回は第2回個別面接について述べる。第2次試験の対策方法を含めた成績開示と総括は次回に回そう。
前回の記事では、第2回個別面接の冒頭、プレゼンが終了したところまで述べた。
今回はその続きからだ。
私は緊張で表情が強ばりながらも、口角は上げ軽快にプレゼンを進めていた。
私の特異な人生経験を、存分に盛り込んだプレゼンだ。きっと面接官には魅力的に映るだろう。だからこそ、第1次試験を突破できたのだ。
しかし、事はそう簡単に運ばなかった。
「5分経過しました。プレゼンテーションを終了してください」
蛍光灯の人工的な光に照らされた会議室の真ん中で、独りぼっちの高齢公務員受験者が、絶望の縁(ふち)に立たされる。
やらかしてしまった。プレゼン終了まで40秒ほど足りなかったと思う。
一瞬、面接自体が終わってしまったかのような感覚に襲われる。RPGでいえば、突然、目の前が真っ暗になってしまった状態だ。
いや、まだだ。
まだこの後の面接で十分挽回できる。たかがプレゼンが5分間に収まらなかっただけではないか。
個別面接の評価は、面接全体の出来で決まる。
私にしては珍しく、すぐに頭を切り替えることができた。
いや、今にして思えば、単純に吹っ切れただけかもしれない。
その後、着席して通常の面接が始まった。
以下、面接再現。「」内が面接官の発言だ。
端に座っているおばさんが質問する。まずはジャブだ。
「志望動機を教えてください」
「この学科はどういう勉強をするんですか」
その後も簡単な質問が飛ぶ。ここまでは問題なく受け答えができたと思う。
ほどなくして白髪の面接官にバトンタッチ。
そこで思っても見なかった発言が。
「さっきのプレゼンさあ、続きが気になるから最後までやってよ」
何?そんなことが許されるのか。普通ならタイムオーバーでやり直しなど不可だ。
多少は私に興味があるということか。そうでなければこんな発言はしない。印象の悪い受験者のプレゼンなど最後まで聞く必要はないからだ。
私は溌剌とした態度でプレゼンを再開した。
「なるほどね」
反応は上々だった。
プレゼンが終わると、長所を訊かれた。ちなみにこれは、面接カードに書いてある。
続いて、短所も訊かれた。
「自分の短所が原因の失敗談は何かある?」
私)それは仕事においてですか、プライベートにおいてですか。
「どっちでもいいよ」
私はプライベートのエピソードを述べた。
正直、全く用意していなかった。即席で、地味な実体験を適当に盛って話した。
面接官全員に笑われた。
だがこの時は、ユーモアのある受験者だとアピールできたと感じていた。秋季チャレンジは、ただ真面目な受験者は要らない。向上心と行動力があり、組織に変革をもたらす人物が求められている。私に怖いものはなかった。
白髪の質問は続く。
そこ(ホワイトボード)に○○て書いてあるけど、例えばどういうこと?
私)××において##したということがあります。
「じゃあここであなたの長所を○○してみて」
は?そんなこと言われても、この能力は、面接で披露できる能力ではない。実は文書における能力なのだが、そんなこと言い返せるわけもなく、即興でアピールするしかなかった。アドリブ力が試されていると思えば楽になる。
意外にも私はアドリブで気の利いた返しのできるタイプなのだ。
私)&&ということです。
「・・・・・・」
喋りながら、白髪が納得していないのがひしひしと伝わってきた。
あまりにも首を捻るものだから、つい私のほうがこう訊いてしまった。
私)理解できましたか。
「いや、全然」
私)!!ということです。
「わかんない」
必死に説明したが、結局納得してもらえないまま、次の面接官に質問権は移った。
たった1人の面接官と話が噛み合わなくても、それだけが理由で不合格になることはないだろう。
純粋な私はこう考えていた。
次の面接官の質問は、定番の質問が多かった。
「自己PRシートに▽▽の推進がしたいって書いてあるけど、▽▽ってどういうこと?」
これは想定質問だ。ノーダメージ。
「希望の部署に配属されるとは限らないけどそれでもやっていける?」
これも想定質問。会心の一撃を返す。この面接官とは友達になれそうだ。
それにしても、この第2回個別面接のために面接カードを書いているのに第1次試験の自己PRシートが手元にあるとは思わなかった。
そして最後の面接官、こいつの質問は少し面食らった。
「最近あった悲しかったことは何かある?」
私)えーと、、、
狼狽してしまった。うれしかったことなら用意してあった。
悲しかったことの場合、2つの軸に照らしてエピソードを選ぶ必要がある。
1つは、悲しさの程度が本当に高いものではなく、自分の人柄が伝わるような悲しさのエピソードを選ぶことだ。
例えば、親族が亡くなったことは悲しい。たいてい、誰にとっても悲しい出来事だろう。しかし、それを面接で話しても聞かされたほうは困惑してしまう。
逆に、悲しさの程度が低いものでも駄目だ。「悲しかったことは、今朝、大雨が降ったことです」これでは視野が狭すぎる。人間味にあふれるが、面接には不向きだ。
2つ目は、興味関心が公務員に向いていると判断されるエピソードを選ぶことだ。
たとえば「先日の九州地方の豪雨で、たくさんの住民が避難生活を余儀なくされたことです」と言う。この回答のポイントは、質問に答えていながら、自然災害の対応が公務員の仕事であることを理解しているとアピールできる点だ。
さて、私はというと、やっとの思いで絞り出した現職での悲しかった出来事を述べた。
かなり突っ込まれたが、それで納得してくれ。
正直、本当に悲しかったことなど面接で話せるわけない。
この年齢になって公務員試験を受験していること、子供のころ思い描いていた夢がことごとく叶わなかったこと、理不尽な悲しいことはたくさんある。
しかし、面接では話せないのだ。理解してほしい。
「それでは面接は以上です。退出してください」
私)はい。ありがとうございました。
終わった。出来としてはまずまずの及第点といったところか。
面接の感想としては、社会人経験があるにもかかわらず、ほとんど大学時代のことを訊かれたので驚いた。
やはり公務員試験は特異な世界だ。
やれるだけのことはやった。あとは合格発表を待つだけだ。
12月上旬、合格発表日の翌日が休みだったこともあり、私は交通費と時間をかけ神奈川県庁まで合格者の発表掲示を見に行ったのだ。
当然、そこまでしたのは、7割方合格していると思っていたからだ。
全体を通して、大きな失敗はない。
帰りは横浜で、合格のお祝いにケーキでも買って帰ろうか。どこのケーキ屋さんがいいかな。
1時間以上かかる移動時間中に、公務員試験受験者が食べログで横浜のケーキ屋のランキングを閲覧している。
この後、人生2度目の神奈川県庁で、不合格の苦汁をなめるとは知らずに。
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